養子縁組の条件【3つのケーススタディ】

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■普通養子縁組の条件
「養子縁組を結ぶための条件を教えてください。」
「はい、では最初に普通養子縁組において
養親となれる者や養子となれる者についての条件を説明していきますね。

まず養子縁組の条件を考える際に、基準とすべつ大きなポイントは
@養子となる者と養親となる者の年齢
A養子となる者が養親の親族の場合、養親となる者の卑属(自分より下の世代の親族)かどうか
B養親となる者が独身者か既婚者か
この3点です。
この3点を基準として、下記の細かな条件をご覧いただければと思います。」

養子縁組の条件@ 養親は20歳以上

養親となろうとする者は成年に達していなければいけません。
つまり20歳以上ということです。
ただし、20歳未満の未成年者であっても、
婚姻によって、成年に達したとみなされる(これを成年擬制といいます。)ことから、
養親が婚姻している場合は、20歳未満でも養子縁組が可能です。

養子縁組の条件A 年上や、年下であっても叔父や叔母は養子にできない。
養親となろうとする者の尊属、または養親となろうとする者より年長者を養子とはできません。
→尊属とは、自分より上の世代の血族を指します。
例えば、場合によっては、自分の叔父にあたる人が自分より年下だったということもあり得るが、
その年下の叔父を養子とすることはできません。
でも、年長者でなければよく、どれくらい年下である必要があるのかは決まっていませんので、
例えば1ケ月年下であっても養子にできます。

養子縁組の条件B 後見人は家庭裁判所からの許可が必要
後見人が被後見人を養子とする場合は、家庭裁判所の許可が必要です。
→これは例えば、身寄りのない未成年の子供の後見人となっていた者が
その子と養子縁組をしようとする場合です。

養子縁組の条件C 未成年者を養子にしようとする場合で、
養親が既婚者であった場合は夫婦がそろって養親になることが必要

養親となろうとする者が結婚しており、養子となる者が未成年であった場合は、
夫婦がそろって養親とならなければなりません。
片方だけが養親となることはできません。
(ただし、例えば女性がバツイチ子持ちで、その連れ子を再婚相手の男性が養子にする場合は、
その男性と連れ子との養子縁組のみが可能です。
また、配偶者が病気等の理由から、養子縁組の表示意思がない場合も、夫婦の一方のみとの養子縁組が可能です。)

養子縁組の条件D 夫や妻からの同意が無ければ養子にできない。
養親となろうとする者に配偶者(妻や夫ということです)がいる場合は、その配偶者からの同意が必要です。
→普通養子縁組の場合、養子になる者が未成年の場合を除けば、夫婦そろって養親となる必要はなく
例えば養父だけとか、養母だけと養子縁組をすることが可能で。
そしてその際は、養子縁組をしない方の配偶者からの同意があればOKです。
もちろん夫婦そろって養親となっても問題ありません。
そして、その配偶者の同意が得られない状態、つまり病気等で表示意思がないなどの場合は、同意は必要ではありません。

養子縁組の条件E 15歳未満との養子縁組は、その子のお父さんやお母さん等の承諾が必要。
15歳未満の者が養子になるためには、その法定代理人(親権者等、つまりお父さんお母さんなど)から養子縁組の承諾を受けなければなりません。
→逆を言えば、15歳以上であれば、養子となろうとする者は自分の意思で養子縁組をすることができます。
(ちなみに養子縁組届には養子自身が届出人となって署名押印する箇所と、法定代理人が届出人となって署名押印する箇所があります。)

そして、お父さんとお母さんが離婚して、実父を親権者、実母を監護者としてわけていた場合、
養子となろうとする者が15歳未満の場合には、養子縁組の届出人は親権者である実父となり、
また監護者である実母の同意が必要となるので注意が必要です。

養子縁組の条件F 未成年者の場合は家庭裁判所からの許可が必要。
未成年者と養子縁組をする場合は、家庭裁判所からの許可が必要です。
→でも、例えば配偶者の連れ子と養子縁組をしようとする場合や、
自分の直系卑属、つまり認知した婚外子や孫等を養子に迎える場合は、この許可は不要です。
なお、家庭裁判所からの許可は、あくまで普通養子縁組が成立するための条件の一つであって、
許可が出ただけでは、その縁組は成立せず、養子縁組届が受理されて初めて養子縁組の効力が発生します。

養子縁組の条件G 何より届出が必要。
何より養子縁組の効力が認められるための条件には「届出の受理」が必要不可欠です。
→実は届出は口頭でもできます。
(養親となる者、養子となる者、証人の2人が全員役所に出向く必要がありますけど。)


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■未成年者との養子縁組の場合の
家庭裁判所からの養子縁組許可の基準


養子縁組の家庭裁判所の審判における、許可の基準は、
何よりも子の福祉に合致しているか否かです。

そのため、
・年長や尊属ではないか。
・養親となる者の年齢条件は満たしているか。

などの法律で定められている養子縁組の条件を審査することはもちろん、

・縁組の動機
・実父母の家庭状況
・養父母の収入、人格、家庭状況
・養子の年齢、日ごろの素行
等も審査されます。

明治時代等の昔によく見られたのが、養子縁組の動機が「養子を労働力とするため」
など、人権侵害のためにこの制度が使われたことがありました。
しかし。そういった子の福祉に反することを防止するためという理由もあり、
未成年者との養子縁組の条件の一つとして、家庭裁判所からの許可があるわけです。

養子縁組が不許可となった事例は三例ほどですけど、下記の通りです。

・単身の65歳の老人を養親、17歳の未成年者を養子とする縁組であったが、
その目的がもっぱら養親となる者の扶養責任を、養子となる者に負担させると認められる申し立て

・夫には妻とは別に内縁の女性がおり、その内縁女性との間の子供について、
妻は養育していく意思は無いにも関わらず、氏の変更を主な目的とした夫婦共同による申し立て

・もっぱら「家名の維持」や「家の墓等の祭祀財産の管理」が目的とされた95歳の老人と9歳の幼女との養子縁組の申し立て

●3つのケースでみる養子縁組の条件
【養子縁組の条件:ケース1】

■15歳未満で自分たちの血筋とは関係ない子と養子縁組をするケース。

(例)血のつながりのない、9歳の男の子を、夫婦が養子として迎える。
この場合の養子縁組の条件は下記の通りです。

・夫婦がそろって養親にならなければならない。
・この9歳の男の子の親権者の承諾が必要。
・この9歳の男の子に親権者の他に監護者がいたら、その監護者の同意が必要。
・9歳なので、家庭裁判所からの許可が必要。
この家庭裁判所からの許可書を添付して、養子縁組届を届出ることとなる。

【養子縁組の条件:ケース2】
■養子となる者が20歳以上であるケース。

(例)血のつながりのない、28歳の女性を、60代の夫婦が養子として迎える。
この場合の養子縁組の条件は下記の通りです。
・この女性は28歳と成人しているので、家庭裁判所からの許可は不要。
養子縁組届の届出だけで養子縁組が成立する。
・養子となるこの女性は未成年ではないので、
養親は夫婦そろって養親となることもできるし、
夫だけとか妻だけが養親となることもできる。
ただし、夫婦の片方だけが養親となる条件としては、養親とならない方の同意が必要。
・この28歳の女性が婚姻している場合、この女性の夫の同意も養子縁組の条件となる。

【養子縁組の条件:ケース3】
■男性の再婚相手の女性に連れ子があり、その連れ子と養子縁組するケース。

(例)29歳の男性が、27歳の女性と再婚する。
その女性には5歳になる女の子がいて、その女の子と養子縁組する場合。
この場合の養子縁組の条件は下記の通りです。

・家庭裁判所からの許可は不要。妻の子供を養子とする場合、家庭裁判所の許可は不要である。
・この5歳の女の子の母親が監護者で、親権者が実の父だった場合、親権者である父が養子縁組の届人となる。そして、監護者である母親は同意することとなる。


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■特別養子縁組の条件
「普通養子縁組の条件についてはわかりました。
では特別養子縁組の条件はどうなっていますか?」
「はい、特別養子縁組の条件は下記の通りです。」

特別養子縁組の条件@ 養親について
養親となろうとする者はまず、結婚していなければなりません。
そして夫婦が揃って養親とならなければなりません。
また、特別養子縁組の場合は、普通養子縁組の場合と違って、
夫婦の一方が25歳以上で、もう一方が20歳以上でなければなりません。
ただし、母親の連れ子と、母親の再婚相手が特別養子縁組をしようとする場合については、
その再婚相手とのみ特別養子縁組をすることとなります。

特別養子縁組の条件A 養子について
養子となろうとする者は基本的に6歳未満でなければなりません。
そして、6歳未満の時点で、特別養子縁組の請求がされていればよく、
審理の途中で6歳を過ぎてたとしても、それについては問題ありません。

そして、養子にしようとしている子が8歳未満であって、
6歳になる前から養親となる者から監護療育を受けていたならば、
8歳未満であっても養子縁組ができます。
ただし、あくまで6歳未満から監護が開始されていることが条件であり、
6歳を過ぎてから監護を始めた場合は、その子が8歳未満であっても特別養子縁組はできません。

特別養子縁組の条件B 実父母について
特別養子縁組を結ぶ際、実父母の同意が必要となります。
ただし、病気や事故による表示意思の喪失や、行方不明等の理由により、実父母が意思表示できないときは
実父母からの同意がなくても大丈夫です。

特別養子縁組の条件C 手続きについて
まず何より家庭裁判所の手続きが必要となります。
また、その家庭裁判所の手続きの中で、
「養親となる者が、養子となる者を6か月以上監護し、状況を考慮しなければならない」
という条件が決められています。
そして、その家庭裁判所からの
・審判書の謄本
・審判の確定証明書
そしてこれらを添付sいて特別養子縁組届を役所に届け出ることが
特別養子縁組の条件となります。

※ちなみに、特別養子縁組については、いくつかの例外を除いては、原則として離縁は認められません。

「このように、特別養子縁組の場合の条件は、普通養子縁組のそれと比べてより厳格です。
そして、特別養子縁組は時間もかかるし、手続きもコツがいると考えられます。
ですので、特別養子縁組をお考えの方は、司法書士さんへご相談されてはいかがかと思います。
司法書士さんは裁判所の手続きのプロですので。」


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